「おいしいよ」のひと言に救われた日
介護施設で食事づくりを担当している私は、毎日利用者一人ひとりの好みや体調に合わせて献立を工夫しています。ある日、嚥下が弱くなってきたBさんのために、好きだった煮魚をやわらかく仕上げ、とろみを加えて提供しました。
配膳を終えて片付けをしていると、スタッフから「Bさんが呼んでいるよ」と声をかけられました。急いで戻ると、Bさんは皿を両手で包むように持ちながら、「今日のごはん、ほんとうにおいしかった。ありがとう」と静かに言いました。
その瞬間、胸の奥がじんわり熱くなりました。食事を作る仕事は、時間との勝負で慌ただしく、誰の役に立てているのかふと分からなくなることもあります。しかし、Bさんのひと言が、私の毎日の努力が誰かの喜びにつながっていると実感させてくれました。
「おいしい」と言ってもらえる。それだけで、明日もまた心を込めて食事を作ろうと思えるのです。
シニアハウス三和(厨房):高杉
