忘れられない一言がある。

施設で介護の仕事をする中で、忘れられない一言がある。

​入居者のAさんは、いつも明るく、周りを和ませてくれる方だ。ある日の入浴後、満面の笑みで私にこう話してくれた。「家にいたら、一人でお風呂に入るのが本当に大変だったんだ。でも、ここなら毎日入れる。お風呂に入れて、本当に幸せだよ。」

​その言葉を聞いたとき、私は胸が熱くなった。

​「当たり前」だったことが、「幸せ」に変わる瞬間

​私たちが当たり前だと思っている「お風呂に入る」という行為は、誰かにとっては大きなハードルなのだと改めて気付かされた。

​自宅で一人暮らしをしていたAさんにとって、お風呂は危険と隣り合わせだっただろう。滑りやすい浴室、湯船をまたぐときの不安定さ、そして何かあったときに助けを呼べない不安。それらが積み重なり、入浴はいつしか「苦痛」や「恐怖」に変わってしまっていたのかもしれない。

​それが、施設に入居し、私たち介護スタッフのサポートを得ることで、「安心」して「気持ちよく」お風呂に入れるようになった。

​Aさんの言葉は、私たちが提供する介護が、単に身体的な介助だけではないことを教えてくれた。それは、「安全」と「安心」という心の支えであり、「QOL(生活の質)」を向上させることなのだ。

​介護の仕事が持つ、深い意味

​Aさんの言葉は、私自身の仕事に対する向き合い方を改めて考えさせるきっかけとなった。

​時には、日々の業務に追われ、目の前のタスクをこなすことに精一杯になってしまうこともある。しかし、その一つ一つの積み重ねが、誰かの「幸せ」に繋がっている。

​「ありがとう」と言われること以上に、Aさんのように心からの「幸せ」を感じてもらえること。それこそが、この仕事の最大の喜びであり、やりがいなのだと強く感じた。

​この経験は、私に介護という仕事の深い意味を教えてくれた。私たちが当たり前に提供するサービスが、誰かの生活に寄り添い、喜びや安らぎをもたらすことができる。この温かい光景を胸に、これからも一人ひとりの入居者さんと向き合い、その人らしい幸せを支えていきたいと強く思う。

訪問介護南津軽:對馬

次の記事

ホワイトボード