介護の現場で見つけた幸せの価値

身近に祖父母がいなかったため、昔の話を直接聞く機会はほとんどありませんでした。子どもの頃に知る“昔話”といえば、教科書やテレビの中の出来事ばかり。だからこそ、「戦争の時代」「食べ物がなかった頃」といった話は、どこか遠い世界のことのように感じていたのです。

ところが、介護の仕事に就き、利用者様と接するようになってから、その思いは大きく変わりました。

ある利用者様は、戦争で戦車に引かれ大けがをした経験を語ってくださいました。別の利用者様は、海軍で戦艦「大和」に乗艦していたことを誇らしげに話してくれました。また、ある方は出撃した飛行隊の中で、自分の乗った飛行機だけが奇跡的に生還できたという衝撃の体験を語ってくださいました。

そうした体験談を直接聞くたびに、今の私たちの生活がどれほど恵まれているのかを思い知らされます。食べ物が当たり前にあり、平和の中で仕事や趣味を楽しめる日常。それは決して「当然のこと」ではなく、先人たちが苦しみを乗り越えてきたからこそある幸せなのだと実感します。

介護の現場は、ときに大変なこともあります。でも、そこで出会う利用者様から「生きる知恵」や「今を大切にする心」を教えていただけるのは、何よりの財産です。介護の現場では、ただお世話をするだけでなく、人生の大先輩から学ばせていただくことが数多くあります。戦争や貧しさを乗り越えてきた利用者様のお話は、私たちに「今を大切にすること」「当たり前の幸せを見直すこと」の大切さを教えてくれます。

これからも、一人ひとりの声に耳を傾け、受け取った学びを自分の生活に生かしていきたい。そして、私自身も次の世代に「幸せのありがたみ」を伝えられるようになれたらと思っています。

訪問介護南津軽:相馬